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心臓病死は死亡原因の第2位

日本では、現在、心臓病はがん(悪性新生物)についで死亡原因の第2位であり、およそ7人に1人(15.3%)が心臓病で亡くなっています。年次推移をみると、昭和40年頃から増加傾向が続いており、平成17年からさらに急激な増加の傾向を示しつつあります(図1)。(尚、グラフで平成7年に減少しているのは、統計処理手続きによるものです。)
一方、心臓病の診断・治療面での技術進歩はめざましく、特にCTやMRIによる画像診断技術は、この数年でいちじるしい発展を遂げました。ここでは、MRIによる心臓画像診断について紹介します。

最新のMRIは心臓の小さな病変を正確に見つけ出します

図2:冠動脈MRI

代表的な心臓病である心筋梗塞は、心臓の筋肉を養っている冠動脈が詰まり心筋が梗塞を起こして働かなくなる病気です。また、狭心症は、冠動脈が動脈硬化によって細くなり、運動したときなどに心臓の筋肉に十分な血液が流れなくなり、酸素が少なくなって胸に痛みが生じる病気です。最新のMRIでは、冠動脈の小さな病変も鮮明に描きだすことができるようになりました(図2)。

心臓の動きを1心拍16~40コマの動画で表示するシネMRIという検査法を使えば、心臓のポンプ機能と心臓の壁の動きをくわしくみることができます(図3)。

さらに、少量の造影剤を使った検査を行えば、心筋の中のごくわずかな梗塞を起こした病変を見つけ出すこともでき(図4)、心筋の血行状態を画像化することも可能です(図5)。

MRIは放射線被曝のない画像診断法です

マルチスライスCTでは冠動脈の細かな画像を得ることはできますが、CTは放射線(X線)を使う必要があります。通常、心臓のCT検査では、胸部単純X線検査の1000倍のX線が使われます。これによりすぐに健康に悪影響が及ぶわけではありませんが、検査を繰り返しているとX線被曝による発癌のリスクがわずかですが増加するといわれています。特に子供や若い方ではCT検査による被曝をできるだけ少なくすることが大切です。
MRIはX線を使いません。MRI装置には、筒状の強力な磁石が入っていて、その中に置かれた身体に向かって電波を送信し、身体の組織から戻ってくる電波を受信して画像を作成します。ですから、X線被曝による発癌リスクを避けることができるのです。

心臓MRI検査の普及をめざして

現在、日本全国の殆どの病院には高性能のMRI装置があり、心臓MRI検査を行うことができます。しかし心臓MRI検査は、個々の患者さんの病状に合わせていくつかの撮影法を組み合わせて実施する必要があり、検査手技がCT検査に比べて複雑になることなどから、残念ながら、現在のところあまり普及していません。SCMR Japan Working Groupは、心臓MRI検査の正しい普及をめざして、心臓MRI検査法の標準化、検査適応の明確化、医師・技師の教育トレーニングを重要課題として取り組んでまいります。普及活動に対する皆様方のご理解をよろしくお願いいたします。